DTrace 動的トレーシングをサポートするプラットフォームでは、 DTrace 静的プローブ付きで PHP を構成できます。
OS の DTrace サポートを有効にするには、 プラットフォーム固有の外部のドキュメントを参照してください。 例えば、Oracle Linux では UEK3 を起動して下記を行います。
# modprobe fasttrap
# chmod 666 /dev/dtrace/helper
chmod を使用する代わりに、 デバイスのアクセスを特定のユーザーに制限するために ACL パッケージ・ルールを使用できるでしょう。
--enable-dtrace 構成パラメータとともに PHP をビルドします。
# ./configure --enable-dtrace ...
# make
# make install
これは、 コア PHP で静的プローブを有効にします。 それら自身のプローブを提供するどの PHP 拡張モジュールも、 共用拡張モジュールとして別々にビルドするべきです。
プローブ名 | プローブの説明 | プローブの引数 |
---|---|---|
request-startup | リクエスト開始時に発射されます。 | char *file, char *request_uri, char *request_method |
request-shutdown | リクエスト・シャットダウン時に発射されます。 | char *file, char *request_uri, char *request_method |
compile-file-entry | スクリプトのコンパイル開始時に発射されます。 | char *compile_file, char *compile_file_translated |
compile-file-return | スクリプトのコンパイル終了時に発射されます。 | char *compile_file, char *compile_file_translated |
execute-entry | op コードの配列が実行される際に発射されます。 例えば、関数の呼び出し、インクルードおよびジェネレータ続行時に発射されます。 | char *request_file, int lineno |
execute-return | op コードの配列の実行後に発射されます。 | char *request_file, int lineno |
function-entry | PHP エンジンが、PHP の関数またはメソッドの呼び出しに入り込む際に発射されます。 | char *function_name, char *request_file, int lineno, char *classname, char *scope |
function-return | PHP エンジンが、PHP の関数またはメソッドの呼び出しから戻る際に発射されます。 | char *function_name, char *request_file, int lineno, char *classname, char *scope |
exception-thrown | 例外がスローされる際に発射されます。 | char *classname |
exception-caught | 例外が捕捉される際に発射されます。 | char *classname |
error | error_reporting レベルにかかわらず、 エラー発生時に発射されます。 | char *errormsg, char *request_file, int lineno |
PHP 拡張モジュールには、追加の静的プローブもあるかもしれません。
使用できるプローブを一覧表示するには、 PHP プロセスを開始して以下のように実行します。
# dtrace -l
出力は以下のようになります。
ID PROVIDER MODULE FUNCTION NAME [ . . . ] 4 php15271 php dtrace_compile_file compile-file-entry 5 php15271 php dtrace_compile_file compile-file-return 6 php15271 php zend_error error 7 php15271 php ZEND_CATCH_SPEC_CONST_CV_HANDLER exception-caught 8 php15271 php zend_throw_exception_internal exception-thrown 9 php15271 php dtrace_execute_ex execute-entry 10 php15271 php dtrace_execute_internal execute-entry 11 php15271 php dtrace_execute_ex execute-return 12 php15271 php dtrace_execute_internal execute-return 13 php15271 php dtrace_execute_ex function-entry 14 php15271 php dtrace_execute_ex function-return 15 php15271 php php_request_shutdown request-shutdown 16 php15271 php php_request_startup request-startup
PROVIDER 列の値は、php および 現在実行中の PHP プロセスのプロセス ID から構成されます。
Apache Web サーバーが実行中の場合、モジュール名は、例えば libphp5.so かもしれません。 そして、実行中の Apache プロセスごとに 1 つ、 一覧表の複数のブロックが存在するかもしれません。
FUNCTION 列は、各プロバイダが配置された PHP 内部の C 実装関数名を参照します。
PHP プロセスが実行されていない場合、PHP プローブは表示されません。
この例では、DTrace の D スクリプト言語の基本を示します。
例1 DTrace を使用してすべての PHP 静的プローブをトレースするためのall_probes.d
#!/usr/sbin/dtrace -Zs #pragma D option quiet php*:::compile-file-entry { printf("PHP compile-file-entry\n"); printf(" compile_file %s\n", copyinstr(arg0)); printf(" compile_file_translated %s\n", copyinstr(arg1)); } php*:::compile-file-return { printf("PHP compile-file-return\n"); printf(" compile_file %s\n", copyinstr(arg0)); printf(" compile_file_translated %s\n", copyinstr(arg1)); } php*:::error { printf("PHP error\n"); printf(" errormsg %s\n", copyinstr(arg0)); printf(" request_file %s\n", copyinstr(arg1)); printf(" lineno %d\n", (int)arg2); } php*:::exception-caught { printf("PHP exception-caught\n"); printf(" classname %s\n", copyinstr(arg0)); } php*:::exception-thrown { printf("PHP exception-thrown\n"); printf(" classname %s\n", copyinstr(arg0)); } php*:::execute-entry { printf("PHP execute-entry\n"); printf(" request_file %s\n", copyinstr(arg0)); printf(" lineno %d\n", (int)arg1); } php*:::execute-return { printf("PHP execute-return\n"); printf(" request_file %s\n", copyinstr(arg0)); printf(" lineno %d\n", (int)arg1); } php*:::function-entry { printf("PHP function-entry\n"); printf(" function_name %s\n", copyinstr(arg0)); printf(" request_file %s\n", copyinstr(arg1)); printf(" lineno %d\n", (int)arg2); printf(" classname %s\n", copyinstr(arg3)); printf(" scope %s\n", copyinstr(arg4)); } php*:::function-return { printf("PHP function-return\n"); printf(" function_name %s\n", copyinstr(arg0)); printf(" request_file %s\n", copyinstr(arg1)); printf(" lineno %d\n", (int)arg2); printf(" classname %s\n", copyinstr(arg3)); printf(" scope %s\n", copyinstr(arg4)); } php*:::request-shutdown { printf("PHP request-shutdown\n"); printf(" file %s\n", copyinstr(arg0)); printf(" request_uri %s\n", copyinstr(arg1)); printf(" request_method %s\n", copyinstr(arg2)); } php*:::request-startup { printf("PHP request-startup\n"); printf(" file %s\n", copyinstr(arg0)); printf(" request_uri %s\n", copyinstr(arg1)); printf(" request_method %s\n", copyinstr(arg2)); }
このスクリプトは、dtrace に対して -Z オプションを使用します。 それにより、実行中の PHP プロセスがない場合に実行できるようになります。 もしこのオプションが書き落とされた場合、 モニターされているプローブがどれも存在しないことがわかっているので、 スクリプトは即座に終了します。
スクリプトは、PHP スクリプト実行中の期間全体にわたって、 すべてのコア PHP 静的プローブ・ポイントをトレースします。 D スクリプトを実行します。
# ./all_probes.d
PHP スクリプトまたはアプリケーションを実行します。 モニタリングの D スクリプトは、各プローブが発射されるたびに その引数を出力します。
モニタリングが完了した際には、^Cを使用して D スクリプトを終わらせることができます。
マルチ CPU マシンでは、プローブの順序は規則的に連続して表示されないことがあります。 これは、どの CPU がプローブを処理し、 CPU の間をスレッドがどのように移動したかに依存します。 プローブのタイムスタンプを表示すると、 混乱を減らすことができます。 その例です。
php*:::function-entry { printf("%lld: PHP function-entry ", walltimestamp); [ . . .] }